白井健三のチャレンジ思考はアクシデントも跳ねのける

いよいよスタートした世界体操2017。体操男子代表6名の中で私が最も気になるのは白井健三選手です。ひねり王子・ゆかのスペシャリストとして注目を集めてきた彼が、今回の世界選手権では個人総合にも挑みます。

◆個人総合に挑むきっかけ                         

白井選手が個人総合を目指すようになったのは、内村航平選手の存在が大きく影響していたのです。

2013年の世界体操に初出場した白井選手。個人総合では内村選手が4連覇する中、白井選手は得意の種目別ゆかで内村選手の得点を超えて金メダルを獲ったのです。そして記者会見で2020年東京五輪について聞かれた白井選手は
「(23歳になっているので)チームを引っ張れる存在になっていたらいいなと思います」
と答えると、すかさず内村選手が
「チームを引っ張る存在になるためには、他の種目もゆかや跳馬に負けない位の構成で失敗しない演技をしてほしい」
と厳しいエールを送ったのです。

また、リオ五輪の記者会見で金メダルを獲得した内村選手は
「僕はここまで日本の個人総合が強いという歴史を作ってきたので、受け継ぐ選手も日本から出てきてほしい」
と話していました。

内村選手の確実に結果を出す圧倒的な演技と彼の発言から、白井選手は
「憧れも追いつきたい思いも強まった一方で、航平さんだけに負担をかけている現状は否めなかった。いつまでも頼ってばかりはいられない」と思い、個人総合に挑戦するスイッチが入ったのです。

◆2人の関係性

内村選手は白井選手について

「他の選手の演技を見ていてもわからないが、健三の演技はパッと一瞬見ただけでどこが悪いかわかる」
「この4年間、健三を一番近くで見てきたのは自分だし、僕を一番近くで見てきたのも健三。今日まで自分から本当に多くを吸収してくれた」

と話し、白井選手も「航平さんがアドバイスくれる事はそのままそうだと思える」と全てを素直に受け入れています。また、

「下が僕を追い抜いていかないと 下が育っていないように見られるのは嫌。ようやく白井が引っ張る体操界になった」

とも話す内村選手。その表情は、今や王者にプレッシャーを与えるまでに成長した後継者の存在を心底喜んでいるように見えました。

◆純粋無垢なチャレンジャー

白井選手のi-colorは【独立タイプ】のゴールド。自分が「これだ!」と思った事をピンポイントで突き詰めてオンリーワンを目指していくゴールドは、時間を忘れて大好きな事に没頭している純粋無垢な子どものように見えることさえあります。
そして、この上なくポジティブでチャレンジ精神に溢れています
今回の世界体操に向けても
「自分の体操は攻めの体操」
「やれる事は試合で全て試して、自分の点数の出方を知りたい」
「良い結果よりやり切った感覚がほしい」
「失敗しての1位より、自分が満足できる演技での2位の方が悔しくない」
「個人総合は(団体と違い)他人に迷惑にならず自分に返ってくるだけ」
「世界大会で失敗する価値は大きい」
「大舞台での失敗は自分を変えてくれる。次に繋がると考えれば失敗も大事なこと」
と、どこまでもポジティブな白井語録も数多く生まれています。
実際、リオ五輪の個人総合ゆかで失敗した演技はその後の大会で1度たりとも失敗していないと言うのです。まさに発言通り!失敗も必ず糧にして成長していく姿は、まさに独立タイプの代表のようです。

それに対して、内村選手のi-colorは【独立タイプ】のグリーン。興味のある事をバランスよく幅広く手がけ、人を適材適所で生かすのも得意なグリーンは、組織の中のディレクター(監督)タイプ。実年齢以上に落ち着いた雰囲気を醸し出している人が多いカラーです。
無邪気に頑張る白井選手にアドバイスを送りながらも、その実力を認め温かく見守る内村選手。お互いの関係性を、仲間でもライバルでもなく『師弟関係だね』と認め合っているのも深く頷けます。

◆予選でまさかのアクシデント

そして今日の予選2種目目の跳馬で、内村選手が着地で左足首を負傷し4種目目から棄権、9年間続いた国内外の連勝記録が40でストップするという予想外のアクシデントが起こりました。内村選手本人は
「けがをするのはまだ下手だから。しっかり治して這い上がってやろうかなと思っている」
と強気の発言。
一方、白井選手は
「航平さんは今までこれだけ僕たちが頼ってきた先輩なので「たまには僕が代わりをするので楽をしてください」と言っても大丈夫かなと思う。(決勝は)安心して上から見ていてほしい

と、これまた大きく構えたコメントを発しています。王者不在のアクシデントが起こっても、白井選手にプレッシャーはなさそうです。

個人総合に全ての技を盛り込んだ『攻めの演技』で臨む予定の白井健三選手。彼の計り知れないポジティブ思考で、今大会も順位を気にする事なく「オンリーワンの白井健三の演技」を出し切ってもらいましょう!!

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