パワハラ指導と真逆 バインコーチの大坂なおみ選手への指導法

テニス四大大会のひとつ全米オープンテニスで、日本人初の優勝を果たした大坂なおみ選手に世界中の注目が集まっています。そして、彼女が心身共にここまで急激に成長したのには、昨年から専属コーチを務めているサーシャ・バイン氏の影響力が大きいでしょう。体育会系の指導とは大きく違う彼の指導法に注目してみました。

◆女性アスリートの扱い方

まず、バインコーチは女子アスリートとの信頼関係の築き方を熟知しているように感じます。彼は、過去にセリーナ・ウィリアムス選手はじめ、多数の女性選手の練習パートナーを務めてきました。その経験を通して、女性ならではの触れられたくない面や、逆に大切にしてほしい面などを学んできたといいます。選手の表情を細かく観察し、選手が常に心地よくいられるように研究し続けてきたのでしょう。

◆信頼関係の深め方

バインコーチは練習以外でも様々な工夫を実践しています。

・大坂選手が好きなマンガやアニメを見る 
・ダイエットをする時はコーチも一緒にする
・イベント等テニス以外の活動時も常に付き添う
・テニス以外の相談にも乗る

など、彼女を理解するべく公私共に寄り添いながら、大坂選手との信頼関係を深めていったのです。
「なおみのことは28時間考えている」と言い切れてしまうのはさすが!としか言いようがありませんね。

◆楽しくポジティブに

また、ネガティブになりやすい大坂選手をポジティブにするべく、笑顔で楽しく練習できるような工夫がなされていました。

そのひとつが、練習試合で負けた後の罰ゲーム。それも大坂選手だけでなく、コーチにも負けたら罰ゲームが課されるのです。罰ゲームの内容も、日本ならトレーニングをさせがちですが、彼らの罰ゲームは遊び感覚タップリです!
大坂選手への罰ゲームは、渋谷スクランブル交差点でダンス。コーチへの罰ゲームは、嫌いな納豆を食べる。どちらも笑いの耐えない罰ゲームです。

そして、もう1つ素晴らしいのは『苦手なプレーが成功した時はポイントアップする』というルールです。頑張って習得したことをしっかり認めてもらえれば、選手のやる気も自然と上がっていくものです。
こうして、楽しみながら練習を重ねてきた大坂選手は

「今は毎日の練習が楽しいし、ハッピーで前向きな人達といると私も前向きになれる」

と、周りのポジティブなスタッフ陣に引っ張られ、メンタル面も大きく変わっていったのでしょう。

◆対等な関係性

大坂選手がインタビューでバインコーチについて聞かれた時、「友達とかお兄さんのような存在」と答えていたのも印象的でした。日本国内で、コーチと選手の関係がここまで対等なケースはまず聞いたことがありません。
以前の試合でも2人のこの関係性が垣間見える場面がありました。
試合途中ベンチに座って落ち込んでいる彼女に対し、バインコーチはしゃがんで大坂選手と同じ目線まで下がって話をしていました。(上から目線のパワハラコーチとは雲泥の差です)

そしてかけた言葉は

「僕は君はよくやっていると思うよ」

「この試合が終わればしばらく休みも取れる。あと少し頑張ろう!」

(それを聞いて「私にはできない」と弱音を吐く大坂選手に対し)

「君ならできる。できることを僕は知っているよ」

と、まず今の頑張りを認めて褒め、本人に否定されても最後まで『君はできると信じている』と言い続けていたのです。ネガティブになりやすい大坂選手は、この声かけで折れそうな気持ちをどんなに支えられた事でしょう。そして、バインコーチからアドバイスしたい時は、いきなり指示口調で伝えるのではなく

こういう時はどうすればいいんだっけ?」

と、まず本人に考えさせ本人から修正方法を引き出す声かけをしているのです。

こうして、以前まではミスが続くとラケットを投げたり、ベンチで泣いていた大坂選手が、全米オープンでは、ラケットを振り上げたものの我慢してそこで気持ちを収めたり、イラついた時も「私はできる」と呟きながら自分でメンタルコントロールできるまでに成長していったのでしょう。

◆楽しみながら伸ばす指導が主流になる時代へ

この2人の関係を見ていると、青山学院大学の駅伝チームを思い出します。

青山学院大学の原晋監督は、選手と共に寮生活し密なコミュニケーションをとりながら信頼関係を築いています。そして、選手それぞれの思考を見分けながら、個別に対応を変えてやる気を後押して伸ばしています。これからの指導は、このやり方が主流になっていくでしょう。

とはいえ、バインコーチや原監督のように、選手と生活まで共にはできず、選手の思考傾向まで熟知できるほど時間を取れない指導者も多いでしょう。そんな指導者の方向けに、全選手のメンタル分析をして、個々のベストアプローチ法をアドバイスしているのが私の仕事です。

選手の伸ばし方、褒め方がハマれば、選手は驚くほど伸びていきます。幸いにも、私がアドバイザー担当させていただいているチームは、初の5連勝・初優勝・初の全国大会出場など、見事に結果に繋がっています。

人は気持ちで動くもの。そして気持ちの持ち方ひとつで、今まで出し切れなかった実力が出せるようになるのです!

楽しみながら選手の自己肯定感と自信を伸ばして結果に繋げたい方は、いつでもお問い合わせくださいませ(^ ^)

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