2020年の大相撲初場所は、記録にも記憶にも残る場所になりました。白鵬と鶴竜の両横綱が途中休場し、優勝の行方が全く見えなくなった今場所。遠藤、北勝富士、正代、炎鵬、など調子のよい前頭力士達による下克上の戦いの中、幕尻で前頭17枚目の徳勝龍が千秋楽に大関貴景勝に勝ち、見事優勝を勝ち取りました!
徳勝龍は現在33歳で、初優勝の年齢としては最年長記録、そして幕下力士の優勝も20年ぶり、奈良県出身力士の優勝に至っては98年ぶりという記録尽くしの優勝となりました。
◆恩師と共に戦った場所
「徳勝龍」の「勝」の字は、近畿大学相撲部時代の伊東勝人監督の名前からいただいたもの。徳勝龍が力士になるための基礎を作り上げてくれた恩師だと言います。その伊東監督が場所中に55歳の若さで急逝されたのです。
徳勝龍の統計心理タイプは、共感タイプのバイオレット。自分1人のためより「信頼する人に恩返しするため」という思いが強いタイプです。恩師の急逝に悲しみも一入(ひとしお)の中、気持ちを奮い立たせて戦っていたのでしょう。監督が亡くなった後は1敗もせず、14勝1敗という見事な成績での優勝を決めてくれました。
表彰式でのインタビューでは
「監督が見てくれていたんじゃなくて、一緒に土俵で戦っていてくれたような、そんな気がします」
と涙を流しながら言葉を振り絞っていました。また
「ずっといい報告がしたいと思って、それだけで頑張れました。弱気になる度に監督の顔を思い浮かべました」
と、監督の存在が精神的支えになっていた事を話していました。
◆共感タイプが力を100%出し切る方法
徳勝龍のような共感タイプは、1人きりで孤独に頑張ろうとすると緊張感が増して実力を出し切れないケースがあります。そんな共感タイプは、本番前に信頼する人や自分を応援してくれる人達の事を思い出し、「1人じゃないんだ。皆と一緒に戦っているんだ!」と気持ちを切り替えると、不安が軽減し緊張感も和らいで実力を発揮しやすいようです。
ちなみに、昨年大関に昇進した貴景勝もこのタイプ。貴景勝関は小学生時代からお父さんの人一倍厳しい指導を受け、根を上げず反抗もせず父に従って努力し続けて来たエピソードが数多く語られています。共感タイプの彼にとってお父さんは、どんなに厳しくても、そばにいてくれる事から得られる安心感の方がずっと大きかったのでしょう。
他のスポーツで見てみると、サッカーの長友佑都選手や澤穂希選手、柔道の井上康生監督、スキージャンプの葛西紀明選手、野球の大谷翔平選手なども共感タイプです。どの選手も自分の押出しは強くなく、自分を支えてくれた師匠や家族、チームメンバーに対する感謝や恩返ししたい気持ちを語っているシーンが多く見られます。
言い換えれば、この感謝の気持ちを強く持って戦っていたからこそ、ここまでの素晴らしい結果を出して来られたとも言えるのでしょう。
◆優勝をプレッシャーにせず自信にかえて
共感タイプは、トップに立つ前の環境の方が自然体でプレーできる傾向があります。その方がプレッシャーが格段に少ないからでしょう。徳勝龍も、今回の初優勝をどう捉えるかが今後の成績に大きく影響しそうです。
「来場所は両横綱が復帰してくるから、今場所と同じ成績は難しいだろう」
「しかし、優勝したからには来場所からは絶対に負けられない」
「対戦相手は「優勝力士に勝ってやろう!」と今まで以上に強気で向かってくるだろう」
などマイナス予測をし過ぎると、緊張感が倍増し身体が思い通りに動かなくなってしまいます。優勝したという事実を大きな自信に変え、亡き伊東監督が常に自分を見守ってくれている事を日々感じながら、今場所のような思い切りのよい取組みを見せ続けてほしいものです!!