内村航平選手が「努力は裏切らない」を証明する日

この夏行われた東京五輪では、多くの日本人アスリートが輝かしいプレーをしてメダルを獲得しました。

その一方で、メダル確実と言われたベテラン選手数名が予選敗退や1回戦敗退という結果で最終戦に進まず五輪会場を去っていきました。体操の内村航平選手もその一人。体操競技が大好きな私も、さすがに内村選手の予選落ちは予測できず、他の競技をTV観戦中にニュース速報でこの悲報を聞き、耳を疑いました。

◆体操キングも落ち込んだ予選での落下

「何が起こったかわからなかった」

「気づいたらバーが手になかった」

今回は団体メンバーには選ばれなかった事もあり、鉄棒1本に絞って繰り返し練習を続けてきて臨んだ東京五輪。演技できるのは鉄棒の一競技のみです。そして、高難度の手離し技(H難度→G難度→E難度)を3つ連続で成功した後、練習で落下した事のない持ち換えの瞬間にバーを掴めずに落下したのです。

「人一倍きちんとやってきた自負はある。努力とは何なんだろう・・・」

落下した直後、内村選手は短い時間でしたが放心状態になっているように見えました。

 

◆最高の状態で引退するか、力尽きるまで戦うか

トップアスリートの現役引退のタイミングには、その選手の価値観が表れやすいと感じています。
トリノ冬季五輪のフリー演技で逆転し金メダルを獲得した荒川静香選手は、五輪終了後にあっさり引退を発表しました。荒川静香選手のメンタル分析タイプは、ロイヤルブルー&コーラル。誰よりも負けず嫌いなコーラルの面があるものの、本質カラーはリスク優先の直感タイプです。直感タイプは『過去の栄光や今現在』より『2歩も3歩も先の未来』をイメージしながら生きているタイプ。荒川選手はトリノ五輪出場スケーターの中では年齢が上だった事もあり「五輪後は引退しよう」と考え「スケーターとして最後の舞台が冬季五輪なんて、私はなんて幸せ者だ」と感じながら演技していたのです。それが、多大なプレッシャーを感じて演技した他の選手よりも無駄な力が抜けて、あの感動的な素晴らしい演技に繋がったのかもしれません。

また、今回の東京五輪で日本初の金メダルを獲得したフェンシングエペ団体メンバーの宇山賢選手が引退を発表しました。彼のメンタル分析タイプは、団体メンバー4人の中で唯一の直感タイプ(ブルー&レッド)です。
「東京五輪で金メダル獲得という自身の夢が叶い、一生に残るものになりました」と話し、今後は所属企業で働きながらフェンシングの普及に関わりたいと話しているそうです。

一方、内村航平選手のメンタルタイプはグリーン(リスク優先の独立タイプ)。1人黙々と努力できる個人競技向きの独立タイプの中でも、全体のバランスを重視しながらまとめ上げるのが得意なグリーンです。過去の五輪出場の際「個人よりも団体の金メダルがどうしてもほしい」と言っていたのは、この価値観から出た発言でしょう。
独立タイプのアスリートは、金メダルや優勝で最高峰に辿り着いても、その後現役を続ける選手が多いように感じます。「まだ成長できる部分がある」と感じる限り、自分の演技から改善点をみつけて試合に挑み続けるのです。それは試合に負けた時も同じ。悔しさを心に留めながら「今は辛いこの経験も必ず自分のプラスに活かされる」と考えるのが独立タイプの特徴です。
東京五輪出場選手の中でも、ソフトボールの上野由岐子選手飛び込み最年長の寺内健選手も、内村選手と同じグリーンでした。何があろうと諦めずに継続し続ける素質を持ったカラーとも言えそうです。

◆内村航平選手が行き着いた答え

そして、内村選手が東京五輪の予選敗退後、考え続けた結果見出した答えは

「努力は報われることを証明するために世界選手権に出場する」

でした。

「東京五輪で努力は裏切られるというのを知ったからこそ、やっぱり努力は裏切らない事をまた証明したいかなと。努力が裏切られたのではなく、自分が努力できていなかったんだというのを証明するために世界選手権をやる感じなのかなと思います」

まさに考えに考え抜いた様子が感じ取れる発言ですね。

彼が言う「努力は報われる・裏切らない」の結果は「メダルを獲得する」とか「優勝する」という事ではないように感じます。独立タイプが満足できるのは、優勝して多くの人に賞賛してもらう事より「自分自身で納得のいく表現ができたか」が重要なのです。戦う相手は、他の選手以上に自分自身なのです。

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今日からスタートする体操世界選手権 男子体操。東京五輪で総合金メダルを獲得した橋本大輝選手を横目に、自分との戦いに徹する内村航平選手の演技を祈りながら観戦しようと思っています。皆さんもぜひご注目ください!!

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