箱根駅伝第100回優勝を飾った青学メンバーのメンタルの強さ

第100回を迎えた箱根駅伝大会。今回は誰もが『駒澤大学優勝』を予想するほど、駒澤大学選手陣のトラック記録や大会記録が他大学より大きく抜きん出ている状態でした。前哨戦の出雲駅伝・全日本駅伝では、両大会共に駒澤大学が優勝。区間賞も駒澤大学が出雲3人、全日本4人と最多獲得していました。

◆負けてたまるか大作戦と青学出場選手のリンク

『駒澤大優勝の一択』と言われる中、青学大の原晋監督が銘打った作戦名は『負けてたまるか大作戦』。そして箱根駅伝を走った選手10名のメンタルタイプを調べてみると、まさにこの作戦名にピッタリのメンタルタイプの選手達が選ばれていたのに驚きました!!

◆久々に揃った強メンタル選手陣

毎年各大学選手のメンタルタイプを調べていますが、今年の青学大出場選手は10名中8名がポジティブ思考!同じ状況やアクシデントが起こっても、その後のマイナス予測をせず「何とかなるさ」と前向きに捉えられる思考タイプです。
また別の切り口でみると10名中7名が独立タイプ。過去の青学大選手でも、初代山の神 神野大地選手をはじめ、久保田和真選手、田村和希選手、下田裕太選手、森田歩希選手、鈴木塁人選手など、ぶれないメンタルで区間賞を獲得してきた選手達と同じタイプです。周りの影響を受けず、自分で決めた目標に向けてマイペースにしかし虎視眈々と進んでいけるメンタル強度の高い選手陣が今年は7名もいたのです。(ちなみに優勝を逃した昨年は独立タイプの選手は今年の半数でした)

◆12月チーム緊急事態の受け止め方の違い

体調管理、特にウィルス予防は大会前の重要な対策のひとつですが、12月初旬青学大チームでは出場候補選手のうち6名がインフルエンザにかかるという緊急事態が起こっていたそうです。同じ状況は他大学でも起きていたと聞きます。昨年も駒澤大の田澤廉選手が風邪明けで体調万全ではない中で力走していましたね。
更に大変だったのは、青学大チームにはインフルエンザ罹患後に虫垂炎になった選手もいたのです。しかし、その選手が今回の箱根駅伝に出場して見事な快走をしたのですから驚きです!これは『メンタルタイプ』が影響したと言わざるを得ないでしょう。
このような厳しい状況をどう受け取るかは『ポジティブタイプかリスクタイプか』で大きく分かれます。前述の通り、今回の青学大チームは『ポジティブ&独立タイプ』が多く揃っています。インフルエンザと虫垂炎になった選手もポジティブタイプです。

★今までこんなに努力してきたのだから大丈夫!
★皆で力を合わせれば何とかなる!
★絶対に自分の目標を達成するんだ!

と明るい未来をイメージして強い気持ちを持ち続けられる選手が集まっていたからこそ、こんな状況でも下を向かずに挑めたのでしょう。

ちなみに原晋監督は『共感&リスクタイプ』。人のサポートや人材育成が得意な共感タイプですが、未来のマイナス予測をして心配し過ぎてしまうのがリスクタイプ。インフルエンザが流行った際は

「シード権獲得も厳しいかも?」

とまで考えたそうです。そして何とか直前まで調整してきた後でも選手達に向けて

「準優勝でもいいよ」

とやや弱気な発言をしたそうです。「本音8割、選手の肩の力を抜くため2割で言いました」と説明していましたが、この言葉を聞いて『ポジティブ&独立タイプ』中心の選手達の心に更に火が着いたのでしょう!

「入学当初から第100回大会で総合優勝しようと目標に掲げてきたのだから、やっぱりそこを目指そう!!」

と選手達の意思で改めて大きな目標を掲げ、気持ちをひとつにしてスイッチを入れ直したのでしょう。

◆3区で逆転した太田蒼生選手は『神野大地選手タイプ』

レース後の太田選手の発言を聞くと『ポジティブ&独立タイプ』らしさ全開でした。太田選手は100%独立タイプ。メインの素質タイプは神野大地選手と同じ、負けず嫌い度No.1のコーラルタイプでした。数年前のブログでも書きましたが、コーラルタイプは

最初から先頭を走るより目の前にライバルがいた方が燃えるタイプ

です。太田選手と競い合った駒澤大の佐藤圭太選手は、1万メートル(トラック)で27分28秒50のアンダー20(20歳未満)日本新記録をマークしたばかり。それに対して太田選手の記録は28分20秒63。トラックの記録上では1分近くも差があるのです。しかしそんな記録は気にもかけず、太田選手は3区で2回スパートをかけました。
1回目は「駆け引きをしかけて相手の体力を消耗させたかった」と。確かに、佐藤選手の真後ろにピッタリついて圧をかけたり初回スパートをかけた後、佐藤選手の表情は一気に硬直していました。そして、サングラスを外し最強ライバルの相手の顔色と息づかいを確認してから2回目のスパートをかけた太田選手。強メンタルとしか言いようがありません!このレースをふり返った時、太田選手は

「佐藤選手との競り合いというのがレースの中で一番楽しくて、本当に箱根を走らせてもらえているということに感謝しながら、本当にレース自体を全部楽しめたと思います」

と笑顔で話していました。ポジティブ思考タイプでなければ、このデッドヒートをここまで楽しめなかったでしょう。そして

「箱根駅伝だけを目標に今日までやってきました」

という言葉を聞いて、昨年の箱根駅伝を思い出しました。一昨年は3区、昨年は4区を快走しましたが、区間賞は取れずどちらも2位。昨年は大学の順位も3位を2位に上げたところまで。この結果が、負けず嫌い度No.1タイプとしてはどうしようもなく悔しかったのでしょう。

また、今年の3区のデッドヒートを見て思い出したのは、神野大地選手が5区山上りで目の前を走る駒澤大選手を上り坂で抜いて一気に首位に立ったシーンです。区は違うものの、同じメンタルタイプの選手がこのデッドヒートを楽しみながら快走している姿は、まさに同じ光景を見ているようでした!!

◆選手のお守りを手作りした田中悠登選手

復路にエントリーされていたものの出場できなかった田中悠登選手は、X(旧ツイッター)で下記のメッセージをアップしています。

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12月30日に脚の痛みが限界を迎え、あと少しのところで出走できず本当に苦しかったです。1年間この日のために頑張ってきたので、色々な想いが込み上げてきました。 でも落ち込んでいても何も生まれないし、面白くない。 そう思い、100円ショップに行き、フェルトや裁縫セットを買って、夜な夜な片桐君とラジオで紅白歌合戦を聴きながら、お守りを作りました。 毎年大晦日は、箱根駅伝に備えて早く寝ているけれど、今年は「悔しいなぁ〜」って言いながら裁縫をして年を越しました。 一生忘れない大晦日です。
こうして気持ちを切り替えられたのは、仲間が声をかけてくれて支えてくれたからです。本当に最高の仲間です。青学に入って良かったと心から思います。 とは言ってもメンバーが快走すると、嬉しい反面悔しくて。今朝のZIPに優勝メンバーが出ているのも羨ましくて、なかなか見られない笑。 こういった悔しい経験が人生を豊かにしてくれると信じて、明るく前向きに頑張ります。 この度、能登半島地震で被災された方々が、早く安心安全な生活が送れるよう、お祈り申し上げます。 北陸出身ということで、とても心配です。私たちの走りを通して、少しでも元気を届けられるよう精一杯頑張ります。

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田中選手のメンタルタイプは共感&ポジティブタイプ。自分だけのためより、仲間のため大切な人のためという思いがパワーになるタイプです。「出場選手全員へのフェルトのお守り作り」と聞いて、「昔女子バレー日本代表の木村沙織選手も選手全員に作っていたな」と思い出しました。田中選手と木村沙織さんは全く同じメンタルタイプ(ピンク)。「選手のために何ができるか?」を考えた時に取る行動はメンタルタイプが影響するようです。
出場選手は全員このお守りを持って走ったと言います。
青学大チームは『学年を超えた仲の良さ』でも有名です。このお守りを渡され、「日々仲良くサポートしてくれた先輩方や出場できない選手達の分もしっかり走って結果を残そう!」という思いを改めて感じて臨めたはずです。こうなると本番では、メンタル最強の選手陣はポジティブオーラを放ち、感謝の思いもプラスされ、メンタル的に更にパワーアップしていたでしょうから、もう誰にも止められないですね。

10区でゴールテープを切った宇田川選手は、ゴール直前に投げキッスポーズをしました。これは

「最後手作りのお守りを出してゴールしようと思ってたんですけど、ちょっときつ過ぎてできなくて。田中さんが全日本駅伝で投げキッスしてたのでそれにしようと思って、とっさの判断です」

と話していました。

チーム一丸となって獲得した箱根駅伝の総合優勝!上記のようなメンタル傾向もありますが、青学大チームの『皆で意見を出し合って常に前向きに考える姿勢』は原晋監督の指導の賜物でもあるのでしょう。
そして『昨年三冠の駒澤大学の存在』があったからこそ、青学大の選手陣がライバルに挑む思いで1年間努力し続けられた事も大きな勝因のひとつでしょう。
OGとしては、母校の総合優勝は喜びと感謝しかありません!
観ている人達も笑顔にしてしまうポジティブマインドで実力以上の力を発揮してくれた青学大駅伝チーム、本当におめでとうございます!!

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