【追悼】衣笠祥雄さん 自分らしさを貫いた全力人生

広島カープで活躍され「鉄人」の名で知られていた衣笠祥雄さんが、71歳で他界されました。早すぎるお別れに多くの選手達から追悼の言葉が贈られていました。

◆フルスイングの選手

衣笠選手といえば、常に全力でバットをフルスイングされている印象があります。今で言えば、ソフトバンクの柳田悠岐選手のようなスイングです。そしていつも笑顔でプレーしているイメージが強く残っているため、子どもの頃から巨人ファンの私でさえ、衣笠選手は好きな選手の一人でした。

衣笠選手をi-color(統計心理分析によるタイプ分類)で見てみると、ポジティブで負けず嫌い、そして一生現役を望む少年の心を持ったコーラル(独立タイプ)と、仲間を大切にする平和主義のバイオレット(共感タイプ)の2つをち合わせた選手でした。

盟友江夏豊さんは衣笠さんのことを
「あいつはブキッチョな男だから。あのスイングを見たらわかると思うけど常にフルスイング。
野球に対してフルスイング。骨折していても3つ振って帰って来る男だから。あの姿がアイツの野球人生を物語っているよね」
と話されていました。

衣笠選手自身が残された言葉では

★自分でできることを自分なりに一生懸命やってきた、ただそれだけですよ
★野球が大好きでした。こんな好きなことを一日たりとも休めますか?
★ひとつハードルを飛び越えられれば、必ずひとつ力がつく。 
 それが自信になって、次にはもう一段高いハードルを越えられる
★運というのは、つかむべく努力している人のところへ訪れてくる

等が目に留まりました。これらの言葉から、独立タイプらしく一人で日々努力してきた姿が垣間見えます。
(引用:地球の名言)
◆江夏豊さんとの絆
広島カープ時代に同僚だった衣笠さんと江夏さん。2人の絆が深まったのは、1979年の近鉄-広島の日本シリーズ第7戦でした。
4対3と1点リードの広島は9回裏、抑えの江夏投手が安打と2四球で無死満塁のピンチ。
広島ベンチは延長に備えブルペンに投手を準備させました。これを見た江夏投手は「何でオレの後に投手を準備するんだ!」と冷静さを失ったのです。この時マウンドに歩み寄ったのが一塁を守っていた衣笠選手でした。「お前がやめるならオレもやめてやる」

そう声をかけられ、江夏投手は感激と共に冷静さを取り戻せたと言います。チームからの信用を失ったと感情的になりそうなこの場面で、江夏投手の表情から気持ちを察知し、彼を心から信頼していることを伝える声かけをした衣笠選手
落ち着きを取り戻した江夏投手は、次の代打から三振を奪った後、打者石渡のスクイズを外す見事な投球を見せ、3塁走者がタッチアウト。2死2、3塁となって、最後は石渡を空振り三振に抑えたのです。
絶体絶命のピンチをしのいで広島に初の日本一をもたらした『球史に残る21球の力投』には、衣笠選手と江夏投手のこんなエピソードがあったのです。(参考: 山際淳司著「江夏の21球」)
そして、今でも3日に1回は連絡を取り合うほど深い親交を続けていたそうです。
衣笠さんの名言にはこんなものもありました。
人間、自分ひとりでできることには限界がある。
だけど人と力を合わせると、不思議なことに不可能も可能に、夢も現実になっていく
だから、出会う人を大切にするんだよ

この信条を、あの江夏投手との日本シリーズ戦でも見せてくれたのでしょう。生粋の独立タイプ選手の場合、他人には関心を寄せず単独プレーに偏りがちなのですが、衣笠選手のもうひとつの顔であるバイオレット(共感タイプ)の面が、チームメイトやチームワークを大切にする姿勢を持たせ、更にあの笑顔をもたらしていたのでしょう。

◆骨折しても相手を気遣う心の広さ
江夏さんが話された骨折出場のエピソードは、巨人の西本投手からデッドボールをうけて肩甲骨を骨折した時の話です。
連続試合出場記録を更新していた衣笠選手の肩にボールが当たったため、広島ベンチからは選手達が飛び出し、キャッチャー前で両チームが乱闘騒ぎに。そんな中、西本投手は衣笠選手の元に走って行き「すいません」を繰り返すばかり。その時、衣笠選手は
「俺は大丈夫。それより危ないから早くベンチに帰れ」

と、こんな時も相手選手を気遣ってくれたのです。
その後、西本投手は動揺が拭えないまま、8-8の同点引分けで試合終了。宿舎に帰って、衣笠さんの自宅に謝罪の電話をかけると
「大丈夫だから心配するな。それより、勝っていた試合に勝てなくてお前は損をしたんだぞ」

と逆に西本投手を叱咤激励する言葉をかけてくれたのです。「なんて人格者なんだ」と西本投手は感動したと言います。
そして翌日、骨折していたにもかかわらず代打出場して、フルスイングで三振。それを見た西本投手は「あれほど驚き、感動し、感謝した三振はありません」と語っていました。その試合後、衣笠選手は三振について聞かれ「1球目はファンのために、2球目は自分のために、
3球目は西本くんのためにスイングしました」

とコメントしたのです。西本投手は「この言葉を一生忘れません」と言って深く感謝していました。
(引用:https://www.nikkansports.com/baseball/news/201804250000118.html)
◆一生現役を全うした衣笠さん
他界される4日前までプロ野球の解説をされていた衣笠さん。どんなに声が枯れていようと、仲間から休めと言われようと休まずに仕事を続けたのは、大好きな野球に死ぬまで関わりたかったご本人の強い強い想いを感じます。きっと心残りはなかったのではないでしょうか。
衣笠祥雄さんのご冥福を心よりお祈りすると共に、彼の意志を継ぐ新たな選手が活躍する事を願ってやみません。

『チームワークの向上』『本番に強い選手育成』にご興味のある方へ

指導者や親御さんに向けて
★子どもの根本的な志向タイプについて
★子どもの特性を伸ばす関わり方
★モチベーション・自己肯定感の上げ方をテーマにしたセミナー

スポーツチームの「チームアドバイザー」として
★個々の選手に適したアプローチ法の具体的アドバイス
★選手向け研修の企画・実施
等を行っています。

ご興味のある方は、下記よりお気軽にご相談くださいませ。

ご質問・お問い合わせ