王者吉田沙保里選手にとって必要だった“負ける経験”

霊長類最強と言われ続けてきたレスリングの吉田沙保里さんが引退発表されました。引退会見で「一番印象深いメダルは?」と聞かれ、彼女は迷わずに「リオ五輪の銀メダルです」と答えていました。もしリオ五輪直後に同じ質問をしていたら、答えは違っていたかもしれません。しかし、リオ五輪が終わった後、後輩の指導やセコンドを経験する中で、『負けた選手の気持ち』を体感できていた事が、ひじょうに大きくプラスの効果を果たしていたのでしょう。

 

◆第一線で輝きを放つ直感タイプ

統計心理学的に見ると、吉田沙保里さんのタイプは、直感タイプのブルー。同じブルーのアスリートは、柔道の谷亮子さん、サッカーの三浦知良選手、フィギュアスケートの伊藤みどりさん、シンクロの小谷美可子さん、とまさに最高峰の選手ばかりです。「やるからには完璧を目指して準備を重ね、世界のトップに立ちたい」という強いメンタル欲求に加え、グンを抜いた技術力とセンスを持ち合わせた人だからこそ、ここまでの位置に上り詰められたのでしょう。

しかし、直感タイプの有名アスリートが皆指導者になっているかというと、指導にあたっている人は少ないようです。カラーは違いますが、大リーグでも最高のMVPを獲得した松井秀喜さん(ターコイズ)も直感タイプの1人です。彼は現在NYヤンキースのゼネラルマネジャー特別アドバイザーとして、マイナーリーグで3年以上打撃指導にあたっていますが、常に「指導の難しさを痛感し壁にぶつかっています」とコメントしています。また、「選手時代は自分の感覚は自分にしかわからないと考えていたこともある」と語っていました。これがまさに直感タイプの持つ「感覚的センス」なのでしょう。そんな直感タイプの彼らが、自分より技術的にも感覚的にも低い選手達に対し、理解できるようにかみ砕いて説明するのは、かなり至難の業なのでしょう。
そして「つねに第一線に存在したい」という思いを強く持っているのも直感タイプの特徴です。谷亮子さんは政治界に入り国政に関わる仕事に挑戦し、小谷美可子さんは日本オリンピアンズ協会理事をはじめ、東京オリンピック招致委員理事、東京オリンピックアンバサダー等数々の役職につき、大会運営側の第一線で活動されています。

それに対し、スポーツ選手を指導する仕事は多大なパワーがかかるものの、主役は選手ですから指導者は陰の存在になります。そこにはあまり魅力や適性を感じない人が多いのかもしれません。

 

◆自分にしかできない役割を果たしたい直感タイプ

メンタル特性的には指導者向きとは言い切れない直感タイプに属する吉田沙保里さんですが、彼女がリオ五輪後に選手の指導に関わったのは、昨年のレスリング界のパワハラ問題が影響しているように感じます。レスリング女子日本代表の歴代メダリストの大半を育て上げてきた栄和人監督が退いたのですから、選手達の動揺は計り知れないものだったでしょう。昨年8月のジャカルタ・アジア大会で初の金メダルゼロという結果に終わった女子レスリングには『チームをまとめる救世主』が求められていました。多くの人から「出来るのはあなたしかいない!」とお願いされると断れないのが、空気を読んだ対応を取って期待に応えたい直感タイプです。世界選手権に向けた強化合宿への参加を依頼され、それを快諾した吉田選手は、合宿では個別指導に留まらず、明るいムード作りを意識した声出しをしたり、円陣の真ん中に入り「強い気持ちで絶対に勝つ!」と大声を出して選手の気持ちをひとつにまとめたと言います。そして10月の世界選手権では金メダルを4つ獲得し、女子レスリング復活のきっかけを作ったのです!

お笑いが大好きで、性格的にも根っからの明るさと人懐っこさを持った末っ子気質の吉田選手です。不動の世界一の座に君臨しながらも、こんなに誰もが話しやすくコミュニケーションを取りやすい雰囲気を持ったアスリートは他にいない貴重な存在だと感じます。
2020年の東京五輪では、日本女子レスリング選手の精神的支えとして『特別統括アドバイザー』的なポジションを用意し、選手陣の気持ちを牽引する大役を担ってほしいと願ってしまいます。「女性としての幸せも掴みたい」と明言されていましたが、それは東京五輪後にお願いしたいところです♡

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