北京五輪フィギュア団体戦で日本が『団体戦で初の銅メダル』を獲得しました。
「日本ってフィギュアスケートは男女共に強いのに団体でメダル獲得が初なの?」と思う人もいるかもしれません。
それは、団体戦は男子・女子の個人だけでなく「ペア」と「アイスダンス」もあり、日本はその2競技で今までなかなか結果を残せていなかったのです。ペアもアイスダンスも、ロシア・アメリカ・中国・ヨーロッパの選手が常に上位を占めて日本は入賞もできない状況だったため、総合ポイントで争う団体戦では今まで1度も3位以内に入れていなかったのです。
そこで今回注目したいのが、木原龍一選手と三浦瑠来選手の「りくりゅうペア」です。
◆ペアで五輪出場3回目の木原龍一選手
個人のフィギュアスケーターとしてスタートした木原龍一選手は、20歳の時にペアに転向し、高橋成美選手と組んでいます。2シーズン目にしてソチ五輪に(他国の出場返上による)繰り上がりで出場権を得る好機を掴みましたが順位は18位。
翌シーズン高橋選手とのペアは解消し、須崎海羽選手とペアを結成。新しいペアで五輪を目指しましたが、成績では出場枠は掴めず。その後またも繰り上がりで平昌五輪に出場できたものの、他国には敵わずSP21位。世界選手権もSP24位。どちらもSP(ショートプログラム)の演技のみでフリー進出を逃しています。
ペアに転向してからなかなか成績を上げられず、木原選手の頭には「引退」の文字が浮かんだと言います。
そして2019年8月に3人目のパートナーとなる三浦璃来選手と出会ったのです。
◆2人のメンタルタイプは『偶然とは思えないほどの相性』
統計分析でのメンタルタイプで見ると、木原龍一選手のメンタルタイプは、素質・外面共に直感タイプ。コツコツ努力するよりも自分のセンスと感覚で演技し、大会本番で多くの人から注目された時に最高の力を発揮しやすいタイプ。その日の演技がうまくいくかいかないかも、その場の空気感や滑り出しで感覚的に感じ取れてしまうタイプでもあります。
そして、3人目のパートナーとなった三浦璃来選手も、なんと木原選手と同じく素質・外面共に直感タイプなのです。
◆初滑りで2人が直感した『相性の良さ』
トライアウトで2人が初めて一緒に組んで滑った時に、直感タイプの木原選手は
「滑った瞬間から絶対にうまくいくと確信した」
と話しています。
そして、同じく直感タイプの三浦選手も
「ペアはどちらかが相手に合わせるものだと思っていたけれど、滑ってみたらお互いが合った」
と言っています。
まさに直感的にビビッと感じ合い、新たなペア結成が決まった瞬間です。
◆ポジティブな木原選手とリスク先行の三浦選手
同じ直感タイプの2人にも違いはあります。木原選手は悪い事は早く忘れて前を向けるポジティブ思考面が強いタイプ。それに対して三浦選手は、本番前に悪い予想が浮かびやすいリスク思考面が強いタイプです。
実際、ある大会当日の公式練習でうまく演技できずに三浦選手が不安を抱えた時、彼女の気持ちを察して木原選手が食事に誘いスケートと関係ない話をして気分転換を図ったそう。このひとときで三浦選手は「実は心が折れかけていたけれど、落ち着きを取り戻せた」と言っています。そして大会では練習以上の演技ができたといいます。
29歳と20歳という年齢差も、相手と意見が対立してもケンカになりにくく、いい関係を保ちやすいひとつなのかもしれません。
感覚的にピタッとはまった上に、お互いの足りない部分を自分の素質(強み)で補え合えている2人。三浦選手は木原選手にやっと巡ってきたベストパートナーと言っても過言ではないのでしょう。
まだペアを組んで3年目、コロナ禍で練習拠点のカナダに戻れず万全とは言えない状況にも関わらず、2021年9月の国際大会で日本人ペア史上初の優勝を獲得した事が、2人の相性の良さを証明しているように感じます。
冒頭の話に戻りますが、今回の北京五輪フィギュア団体戦で日本が銅メダルを獲得できたのは、木原三浦ペアがSPで4位、フリーではほぼノーミスの演技で2位の高ポイントを獲った事が大きいのです。
北京五輪のリンクの感触を掴んだ2人が、次のペア個人戦で直感タイプの本番強さを活かし、世界中が注目する五輪の舞台で最高の演技を見せてくれる事を期待しています!!