ホーバス監督の指導スタイルが日本人選手の実力を引き出す

男子バスケットボールワールドカップで日本代表(アカツキJAPAN)が3勝をあげアジア最上位になり、2024年パリ五輪の出場枠を自力で獲得しました!!
アカツキJAPANを率いたのは、東京五輪で女子バスケットボール日本代表を銀メダルに導いたトム・ホーバス監督。日本人選手にフィットしたホーバス監督の指導方法についてまとめてみました。

◆日本語での指導

各種スポーツで海外の監督が就任する事は多々ありますが、大半の監督は日本語で指導できず通訳を介して指示を出します。
ホーバス監督について選手達からは「通訳を通さず日本語で言ってくれるのでダイレクトでわかりやすい」と好評が聞かれます。
また、通訳を介した指導の場合、選手が監督に意見を言いたくても通訳に伝えるというワンクッションが入ると思うと発言を諦めてしまう選手もいるでしょう。ホーバス監督なら、その場で日本語で発言すれば理解してくれるので、監督と選手のコミュニケ―ションもスムーズに行えているのでしょう。

◆自信を持って!

ホーバス監督がよく口にされる言葉は「believe=信じること」。
試合のタイムアウト中に選手達へ

「自分を信じて!」
「チームメイトを信じて!」
「うちのバスケットを信じて!」
「世界で一番準備してきたでしょ!」

と言い続けています。
強豪国チームと戦う際に感じてしまう『不安や緊張』。それを消し去るには『誰にも負けない練習量』と『仲間や自分を信じ切る気持ち』が必須と考えてこれらの声かけをしているのでしょう。そして、ホーバス監督が以前指導していた女子バスケットボールの選手からは
「自分が自身を信じるよりも、監督が私達を信じてくれているのが嬉しかった」
というコメントが聞かれました。

また、8月の試合では河村勇輝選手がパスプレーが続きシュートチャレンジしなかった際、監督は彼を即交代しベンチで厳しく注意していました。しかし次のクォーターで出場した時、河村選手は即スリーポイントシュートを決めていました。ホーバス監督は河村選手について
「(自分が)怒っても彼はその後すぐやる、そのリアクションが好き」
と河村選手の素直な姿勢を褒めていました。このように、厳しい指導をしていても長所はしっかり言葉にして伝えるという行動が選手との良い関係性に繋がっているのでしょう。

◆いつも通りのプレー

今回のW杯ベネズエラ戦の第4クォーターでは比江島慎選手が驚異的な活躍を見せてくれました。試合後、渡邊雄太選手と富樫勇樹選手は
「これマコ(比江島慎)の普通ですから」
「毎試合やれよ!(笑)」
と愛あるコメントをしていました。この会話からもわかるように、今回の日本代表チームは「いつも通りのプレー(=ディフェンスからのリバウンド獲得と、スリーポイントシュートを高確率に決めるプレー)をすれば必ず勝てる」というチームの実力を選手全員が確信しているのでしょう。だからこそ、最後まで諦めずにプレーした結果、フィンランド戦やベネズエラ戦のような大逆転劇が生まれたのだと思います。
やはり最後の最後に実力を発揮させるためには、『諦めなければ勝てる!と全員が本気で信じ切る気持ち』が大きく影響するようです。

◆日替わりスターのいるチーム

現在の日本代表チームには「常に試合を引っ張る大黒柱」は存在しません。その代わり、スリーポイントの成功率の高い選手達と、徹底したディフェンス力を持った選手、リバウンドを獲得できる選手、そして好スティールできる選手がいます。つまり「試合ごとにニュースターが生まれるチーム」なのです。
今後パリ五輪に向けてNBAで活躍中の八村塁選手が加入するかは現状未定ですが、ホーバス監督は
「彼(八村)が来るなら、うちのバスケ(チームプレーバスケ)をしてもらいます」
と、チームプレーバスケのスタイルを崩さないと言い切っています。更に
「このチームは天井がどこにあるかまだわからない。そこは楽しみです」
と更なる伸びしろにも期待しています。

◆最近の日本代表監督の共通点

サッカー男子日本代表の森保一監督、WBC日本代表の栗山英樹監督、そして今回の男子バスケット日本代表のトム・ホーバス監督
この3名の指導方法と素晴らしい結果を見ていると「日本スポーツの指導方法は大きく変わった」と言わざるを得ません。
この3名の指導者の共通点は

★監督自身の満足感や利益より、選手を第一優先に考える姿勢
★個々の選手の長所や実力を、本人以上に信じ尊重する気持ち
★選手と1対1の対話時間を増やし、強固な信頼関係を築いている
★上に立たず、選手が意見を言いやすい関係性を築いている
★不安やネガティブな思考を消し去るような練習を実践させている
 (分析データに基づいた納得感のある練習・世界一のトレーニング量など)
★出場できない選手の思いも受け取りそれをチームパワーに変えられる配慮ある行動ができる

などが挙げられます。
ひと昔前の「いいから俺のやり方に黙ってついて来い!」→「はい!」の選手が受身な関係性から
監督は選手の不安を取り除いて背中を押し、選手は自分で考え時には意見しながら、皆で最高最強のワンチームを作っていくスタイルに大きく変わっていきそうです。

ちなみに統計心理タイプでは、3名共に『共感タイプ』ですから
・選手1人1人の気持ちを理解しようとする
・自分より仲間が輝く事から満足感が得られる
という特性を活かした指導が功を奏しているのでしょう。

違う心理タイプの指導者からみると「甘いんじゃないの?」と感じるかもしれません。
しかし、上から押さえつけた指導では、ストレスフルな上に本人の納得感がないため、個々の本領は発揮し切れないでしょう。
今年の夏の甲子園で決勝に勝ち上がった慶応高校と仙台育英高校の両監督も、この3名の指導法に近しい対応を取られています
イマドキの世代に適した彼らの指導法が、今後浸透し拡がっていきそうで楽しみです!!

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