女子テニス全豪オープンで、大坂なおみ選手が見事優勝を果たしてくれました。今大会での大坂選手は、フィジカル面も一段と強化されていましたが、それ以上に試合ごとに見せるメンタル面の成長が何よりの勝因だったことは多くの人が感じたところでしょう。
◆自分自身を客観的に認識して受け入れる
彼女は自分のメンタルについて
「精神的に3歳くらいのところがある」
「自分にとって最大の目標は人間として成長すること」
と話していました。そして試合で勝ち上がる中、メンタルの成長について聞かれると
「1歳くらい成長したかな。4歳ね。Happy birthday to me. 」
と冗談交じりに控えめなコメントをしていました。
彼女が素晴らしかった点は『自分のメンタル特徴を客観的に理解した点』でしょう。脳科学や心理学の専門用語で『メタ認知』という言葉があります。『メタ認知』とは“自己の認知活動(知覚、情動、記憶、思考など)を客観的に捉え評価する事で、自分自身をコントロールできる能力”を意味します。
大坂選手は自分のメンタル特徴の中に、実年齢より子どもっぽく、うまくいかないと凹んでモチベーションが落ちやすい面があることを客観的に受けとめ認めたのです。
◆メンタル特性に適したやる気アップ対策を取る
そして彼女は、子どもっぽい面を持った自分のメンタルが落ち込んだ時に、再度やる気を取り戻す対策を考えたのです。インタビューで彼女は下記のように答えています。
「私は今グランドスラムで素晴らしい相手と戦っている。悲しいなんて思っちゃいけない。この瞬間を楽しもう!と考えて気分を切り替えた」と。
確かに今回の全豪オープンでは、試合中にミスをしても以前のようにラケットを投げつける事はなく、時々微笑みを浮かべながらラケットをじっとみつめる場面が何度も見受けられました。「この場を楽しまなきゃ!」と自分に言い聞かせていたのでしょう。
幼い子どもが機嫌が悪くなってふてくされた時、親は気分を変えようと他の楽しいことを持ちかけるでしょう。彼女はそれを自分自身で行っていたのです。
◆成功するシーンを具体的にイメージする
また、ポイントを決めたい場面でサーブを打つ直前、彼女は握りこぶしを作り自分に向かって小さくガッツポーズを取っていました。「次のサーブは必ず決まる」と次に起こる未来を詳細までイメージしてゴール設定すると、脳はそのイメージを実現するべく稼働し出すと言われています。逆に「次のサーブが決まらなかったらまずい、どうしよう・・」とマイナスに予測してしまうと、その場面がゴール設定され、身体は緊張し思い通りに動かなくなるのです。
大坂選手は全豪オープンの試合を通して、成功している未来を意識的に強くイメージし、自分の中にいる3歳児のメンタルのご機嫌を取りながら試合を進めて行けるまでに成長していたのです!
◆メンタル年齢が幼い人
大坂選手のように『メンタル年齢が実年齢より幼い人』はどんな分野にも見受けられます。
□何歳になっても無邪気で元気
□楽しい事を求めてアクティブに行動する
□厳しくされるより褒められる方がやる気が出る
□自分の考えを否定されるとむきになる
□うまくいかないと落ち込んだり不機嫌になる
など、喜怒哀楽がわかりやすく表れる人はこのタイプでしょう。このタイプの人が努力してメンタル年齢を大人にまで引き上げるのは至難の業です。しかし、自分が心地よい場面を作るように心がければ、ポジティブでエネルギッシュな良い面が引き出されるのです。
◆お互いを活かし合う
メンタル年齢が幼い人は「大人タイプになりたい」と思うかもしれません。しかし、家族・学校・会社等どんなコミュニティの中でも、メンタル年齢が幼い人と大人タイプの人は双方共に必要なのです。メンタル年齢が幼い人には、アグレッシブさやプラスの発想力・ムードメークなど、大人タイプの人には無い特性を持っています。それを引き出すのが大人タイプの役目であり、逆の関係性でも同じことが言えるのです。
大坂選手の場合、メンタル年齢が大人タイプと思われるサーシャ・ベイジンコーチ始め多くのスタッフ陣が、大阪選手のプラス面を褒めて、彼女が常に気持ちよく行動できるようにサポートし続けたのでしょう。そして、彼女自身が自分を認めて受け入れる=彼女の自己肯定感を高めて自信をもたせる事に成功したのでしょう。
違うタイプの相手を羨むのではなく、お互いの特性を理解し、場面ごとにお互いを活かし助け合いながら成長するのがチームや組織の理想形であり、『チームなおみ』はまさにそのお手本となる姿を見せてくれたのではないでしょうか。