バンクーバー冬季五輪で銅メダリストを獲得し、男子フィギュアスケーターとして代表的選手である高橋大輔選手が、先日行われたNHK杯でアイスダンス選手として公式戦デビューを果たしました。
◆シングルからアイスダンスへ転向
男子シングルスケーターとして絶大な人気を誇っていた高橋大輔選手。昨年12月の全日本選手権出場を最後にシングルスケーターとして２度目の引退を表明。今年１月からアイスダンスに転向し、村元哉中選手とペアを組んで僅か11ヶ月。初挑戦の女性スケーターのリフティングも、筋力強化により大きなミスなく演技していました。そして、シングルスケーターの頃から評価の高かったスケーティング技術と表現力を活かし、ミスはあったものの総合３位という見事な結果を出していました。
◆高橋選手の性格
４人兄弟の末っ子で人見知りが強く甘えんぼうだった少年時代。３人の兄が習っていた少林寺拳法でもらってくる賞状が羨ましかったものの、人と争うのは苦手。そして出会ったフィギュアスケートで開花した、と言われています。
しかし、相手と１対１で争わないものの、フィギュアスケートは１人っきりで広いリンクに立ち、観客全員の視線を一手に受けて演技しなければなりません。彼の試合を何度となく見続けてきましたが、演技直前の彼はテレビ画面を通してもわかる位震えている事が多々ありました。そして、緊張感マックスの中で行う演技では、ジャンプで弱気になり回転数を少なくしたり、難易度の高いジャンプに挑戦してもミスしてしまう事が多く、パーフェクトな演技ができた事は数少ない印象です。そんな人一倍繊細で緊張しやすい高橋選手が、アイスダンスに転向すると聞いた時、私は
「それは高橋選手にピッタリだ！！」
と感じたのです。
１回目の引退後、様々なアイスショーや舞台に出演して仲間達と演技する高橋選手は、試合で戦っている時よりもリラックスしてのびのびと演技しているように感じました。もちろん以前と変わらず本番前は緊張していると思われますが、シングルスケーターとして１人で戦っていた頃とは違い『仲間と一緒に作品を作り上げている』という状況が、共感タイプである彼の気持ちを安定させていたのでしょう。つまり、常にパートナーの手を取りながら一緒に演技できるアイスダンスは、高橋選手のメンタルタイプ的にはシングルよりも適した競技だと感じたのです。
(画像元：https://www.google.co.jp/amp/s/amp.natalie.mu/stage/news/3413737)
◆メンタル面での２人の関係性
心理分析でのタイプ分類では、それぞれのタイプに精神年齢的な要素があります。村元選手の素質タイプは人生経験豊富で調和を望む年配層(i-colorバイオレット)、高橋選手は少年のような無邪気さと危なっかしさを残しつつも新たな道に挑戦し続ける青年層(i-colorオリーブ)という違いがあります。高橋選手が以前ケガ後のリハビリが辛過ぎて後先考えずに逃げ出したエピソードからも、彼の精神年齢的要素が垣間見えます。
今回の公式戦の演技直前に２人が目をみつめながら集中力を高めている時、緊張した表情の高橋選手に村元選手が言葉をかけ、それに高橋選手が頷いて応えていました。その様子は、実年齢(７歳差)が逆転して『お姉さんと弟ペア』のようにさえ見えたのも当然の事かもしれません。
◆試合後の２人の様子
また、試合後のインタビューでは、先にパートナーの村元選手が大半を答え、その後高橋選手が少しだけコメントを補足している場面が何度も見受けられました。
インタビューでの即答も得意な方ではない(と思われる)高橋選手にとって、ハキハキと答えてくれるパートナーの存在は心強い事でしょう。そして２人はインタビュー中に何度もお互いの目をみつめ合っていました。お互いに対する気遣いと、緊張感を取り除こうとする行動のひとつと言えるでしょう。更に、高橋選手は
「試合後の達成感が１人の時より２倍になった」
と嬉しそうに話していました。こんなコメントからも精神的安定度は以前より高まっているように感じます。
◆今後の成長に期待
2022年2月にせまった北京冬季五輪。このペアが日本代表に選ばれるには、技術レベルでの急成長が求められます。しかし、元々持ったスケーティング技術や観る人を惹きつける表現力は、世界的に見ても抜きん出ている高橋選手です。そして、メンタルタイプ的にピッタリのパートナーを得た彼の今後の成長には期待しかありません！
ただし、ひとつだけ気になるのは、２人とも基本的に真面目なため、試合に向けて練習を追い込み過ぎてケガをしてしまう危険性がある事。それさえ注意すれば、日本代表も現実味を帯びてくると思われます。
試合ごとに成長が見られるであろう彼らの演技に、これからも注目して応援していきたいと思います！！
