選手がケガをした時まわりはどうフォローするべきか

先日、ある野球少年が『野球肘』になり、来月から始まる大会に出場できなくなった話が入ってきました。
「野球肘」とは、過度に繰り返される投球動作が誘引となって肘関節の軟骨部分や靭帯部分が離れたり剥がれたりするスポーツ障害のひとつ。投手に多くいわゆる投げ過ぎ=オーバーユースが原因の代表的スポーツ障害です。この少年の場合さほど重症ではなかったものの、1ヶ月はスローイングしない方が良いという診断が出たのです。
こんなアクシデントに襲われた時は、選手自身のケガの受け止め方をよく観察し、治療だけでなくメンタルフォローする事も大切です。
今回はこの野球少年の場合を例にとってお話します。

◆どこまでもポジティブな少年K君

K君はチームのエース投手。そしてバッティング・走塁・守備全てにおいて秀でたマルチな選手です。彼が1ヶ月試合に出場できないのはチームにとっても大きな痛手です。
しかし彼は今回のケガで焦る様子も見せず「大丈夫、バッティングで頑張るから」と頼もしい発言をしていると言います。
お母さんに話を伺うと「ピッチングマウンドではどんなピンチになっても動じる事はまずない」そうです。
試合後「あそこでよく慌てなかったね!」と言うと「だってオレ神だもん!」と答えるとか。

彼のi-color(統計心理分析)を見てみるとメインカラーはターコイズ。大きな舞台ほど自分の出番とばかりに力を発揮できるセンスを持った直感志向であり、リスク的予測は考えつかないポジティブな思考回路なのです。彼はピンチの場面を自分がヒーローになるチャンスと捉えられるのです。

彼のお母さんも同じく大舞台に強い直感志向のi-colorブルーですが、ターコイズと違いリスクを考えてしまう慎重派。親である彼女からみても「息子のあの根拠なき自信はどこから来るのか不思議」だと言います。
しかしこれは持って生まれたすばらしい特性ですから活かさない手はありません!投手としてはリリーフが適任と言える肝の据わった志向タイプです。
彼のようなポジティブ思考の選手には過度なメンタルフォローは必要ありません。
「治ったら休んでた分を取り返してガンガン活躍してくれよ!」と未来の活躍しているイメージを膨らませる声かけで気分を上げ、そのためにも1日も早く復帰できるように治療しようという気持ちに持って行ってあげましょう。

◆心配でパニックになるお父さん

K君のお父さんは野球経験がないものの独学で野球理論を学び、チームのスコアラーも務める教育熱心な方です。お父さんのi-colorはバイオレット。家族や信頼する人のために全力を尽くし、皆に感謝される事で満足できる共感志向です。K君や奥様の直感志向とはものの捉え方が大きく違います。
共感志向は心優しいのですが、突然のアクシデントに弱くパニックに陥りやすい面を持っています。それが今回のK君のケガでも露呈しているのです。

K君が野球肘になり来月からの大会に出場できなくなった時点で、お父さんの頭の中では様々なリスクが駆け巡ったのです。息子が投げられない→チーム全体に迷惑がかかる→試合に負ける→選抜チームメンバーにも選ばれない・・・というマイナスな予測ばかりが浮かび「この先どうするんだよ・・」と本人より肩を落として落ち込んでいるというのです。起きてしまったケガを悔いても始まらないのに最悪の事態ばかり考えてしまうお父さん。これは共感志向だけでなくほかの志向タイプでも「リスク優先型」の考え方を持っている人が陥りやすい思考回路なのです。

このご家族の場合、K君がポジティブなi-colorターコイズだった事が本当に救いです。
もしK君がお父さんと同じタイプだった場合、お父さんと同じ位心配事で頭がいっぱいになった上、いつも見守ってくれているお父さんをこんなに意気消沈させてしまったと必要以上に責任を感じ、立ち直れない程落ち込んでしまった事でしょう。

お父さんが隣で頭を抱えて時には逆ギレされても「大丈夫、何とかなるよ」と言い切れるK君は本当に頼もしい限りです。

◆リスクタイプは1つずつ不安を取り除いてあげる

ではこのお父さんのように、心配事が先に立ってしまう選手がケガをした時はどう対応すれば良いでしょうか。マイナス思考の彼らに「そんな後ろ向きな事を考えるな!」と言ってもそれは無理というもの。
周りの人は、その心配事を1つずつ解決していってあげましょう。
「それはケガが治ってからすれば間に合うよ」
「それは私が代わりにやるから大丈夫」
と具体的に不安材料を取り除いて行けば、マイナス発言も少なくなり治療に専念する方に注力しやすくなるでしょう。

◆まとめ

K君とお父さんのように、親子であっても物事の捉え方が全く違う事は多々あるのですから、指導者と選手であれば尚の事です。ケガでマイナス思考に走ってしまう選手には

・「マイナスの思考グセは簡単には変えられないもの」と捉え無理にポジティブ思考を強要しない

・モチベーションが落ちた相手に合わせて、まずは気持ちに寄り添いその辛さを共有する

・その後、混乱した頭の中の絡まった糸を1つずつほどいていくように解決策を提案していく

・「常に伴走して支えるから安心して」と置いて行かれる孤独感を取り除く

これがリスク優先思考の選手がケガをした時の最善策だと考えます。

特に自分軸が明確でポジティブ思考の親御さんや指導者の方々は真逆のタイプですので対応が難しいとは思いますが、むやみにマイナス思考の選手の心を折らないように細心の注意を払った対応を心がけていただきたいのです。

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