【青学 箱根駅伝2020】エース牽引チームから総力戦チームになり勝ち取った優勝

2020年明けましておめでとうございます。毎年年始の楽しみである箱根駅伝。2020年は母校青山学院大学が総合優勝を決めてくれました。

2019年の箱根駅伝では、復路の追い上げ虚しく2位で終わり連覇が途切れた青学大。そしてエース選手を有した4年生が卒業していきました。チームを牽引するエース選手が不在の中「2020年の優勝奪回は厳しいかな?」と弱気に考えていた私ですが、まさかの往路・復路合わせての総合優勝を成し遂げてくれました!どうやってこの新しい雰囲気のチームを構築できたのでしょうか?様々なエピソードと共に、私なりの統計心理分析も加えながら考察してみました。

 

◆4年生を叱咤激励した原晋監督

普段は自分で考えて行動させる事を重視している青学チームですが、今年の4年生には監督も業を煮やしていたようです。監督曰く「ダメダメ世代」な今年の4年生達に

「自分達で頑張らずに成績の良い後輩達に頼ったチームにするなら、今年は2ヶ年計画でいくぞ」

とまで言わせてしまい、彼らも改めて気持ちのスイッチを入れ直したようです。夏合宿では今までと一線を画す程の追い込んだ走り込みを行い、個別にも独自の努力を積み重ねてきたと言います。

また、4年生に頼れるエースがいないからこそ「全員が漏れなく力を出し切らなければ優勝できない」という思いが、今回の10人の走りに繋がったのでしょう。一人も欠ける事なく全員が、後半まで速度を落とさず粘り強い走りを見せてくれました。過去に青学大が優勝した大会の中で『区間賞の数が最も少ない優勝』なのも、今回のチームカラーを表しているように感じました。

 

◆リベンジを心に挑んだ岩見選手

昨年の箱根では低体温症で失速し1位から順位を落とした岩見選手は、その責任を胸に人一倍努力を重ねてきたと思われます。

統計心理分析による彼のタイプは、人前では努力する姿は見せないものの、陰ながら集中して練習し、本番で圧倒的な力を見せたいロイヤルブルー(リスク優先思考の直感タイプ)多くの人からの称賛がエネルギーの元です。

今年のチームは圧倒的な力を持ったエースが不在の厳しい状況でした。しかし、これは岩見選手から見れば「自分が良い走りをすれば、称賛される可能性がいつも以上に高い舞台」でもあったのです。

また、彼が走る8区は、昨年の箱根で区間記録を打ち出した東海大の小松選手が2年連続で走る事になりました。ここで大半の人は「厳しい区だな」と思いがちですが、直感タイプは強い相手がいた方が本気スイッチが入りやすいのです。そして1位青学大・2位東海大という最高の条件でスタートした8区は、終わってみればなんと岩見選手が東海大エースの小松選手と僅か1秒差という見事な走りを見せて、2校の時間差をほぼ縮める事なく1位を死守したのです!8区で大きく時間差を縮める予定だった東海大にとって、岩見選手の予想外の好走は彼らの勝算を狂わせた事でしょう。そう考えると、岩見選手の走りはまさに金星・MVPに相当すると言えるでしょう!

ちなみに9区を走った神林選手も大舞台で称賛されたい直感タイプ。以前ドラマ「陸王」にランナーとして出演していた選手です。今回初の箱根出場でありながら、区間賞を取る素晴らしい走りを見せ、襷を渡す直前には腕を振り上げ大きくガッツポーズを決めて注目を集めていたのも、このタイプらしいなと感じました(笑)。

 

◆エントリーを辞退した竹石選手

2018・2019年と箱根5区に出場し「新・山の神」と言われ期待されてきた竹石選手(4年)。昨年は足の痙攣で全力で走れず順位を大きく落とし、足を引き釣りながら往路のゴールテープを切ったシーンは記憶に残っている方も多いでしょう。今年こそ借りを返したい思いは誰よりも強く持っていたものと思われます。しかし左足痛から復調しないまま年末を迎えます。それでも数少ない箱根経験者として監督はエントリーを検討していたようですが、竹石選手は「僕を外してください」と直訴したと言います。本気でチームの優勝を考える4年生としての決断だったのでしょう。

そして彼は選手に力水(ちからみず)を与える給水担当という重責を任されました。

統計心理分析による彼のタイプは、仲間を想う気持ちが人一倍強く、縁の下の力持ち的な役割で存在感を表すイエロー(リスク優先思考の共感タイプ)です。給水担当はまさに打ってつけの役割だったと言えるでしょう。同学年で主将の鈴木塁人選手に3区で水を渡す時にかけた言葉は「ありがとう!」。悩みながら共にチームを支えてきた彼に伝えたかったのは、励ましの言葉より4年間の感謝の言葉だったようです。


◆実力を発揮した1年生岸本選手

選手層の厚い青学チームの中から、唯一1年生で出場を果たしたのは岸本大紀選手です。彼の統計心理分析タイプは、不安を解消するべく日々の努力を惜しまないバイオレット(リスク優先思考の共感タイプ)。竹石選手と似たタイプで、注目の集まる大舞台では緊張しやすいタイプです。彼らのタイプは本番前に「頑張れ!」と言われると、その責任の重さをさらに意識してしまい身体が硬くなりがちです。

そんな彼に原監督がかけた言葉は「安心して走ってこい」。この声かけで「前後には強い先輩達がいるから大丈夫なんだ」という思いに切り替わり、過度に緊張する事なくのびのびと走れたのでしょう。寮で共同生活をしている原監督だからこそ、岸本選手の性格や響く声かけは熟知していたと思われます。原監督は出走選手の采配だけでなく、選手の力の引き出し方もジャスピンな対応を取られているのですから、さすがの一言に尽きます!

 

◆データだけでは勝てない箱根駅伝

昨年の個人記録を並べて比較してみれば、青学大の選手より良い記録を持った選手を多数有している大学も存在していた今回の箱根駅伝大会。しかし、記録通りに行かないのも箱根駅伝の面白さのひとつなのでしょう。

エース不在でも全選手の力を引き出して優勝を果たした青学チーム。このチームに勝つためには、練習で記録を伸ばすだけでなく、選手のメンタルを試合当日にどうやってベストに持っていくかにも目を向け、選手のモチベーションを上げるアプローチ法を指導者側が学び実践していかなければいけないのではないでしょうか

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