不安と恐怖に打ち勝つ方法 村田諒太選手の場合

ロンドン五輪で日本人として48年ぶりにボクシング金メダルを獲得した村田諒太選手。
その後プロに転向。そして5月に行われたWBA世界ミドル級王座決定戦では、相手からダウンを奪い試合の主導権を握っていたにもかかわらず、結果は予想外の判定負け。
あれから5ヶ月たった今日、アッサン・エンダム選手との再戦で、見事TKOで勝利を収めました!!

試合後は喜びの涙を流し、インタビューでは多くの人達への感謝を伝えた後
「一歩踏み出す勇気を持ってやってきました」
「Make this ours. 今日の勝利も皆が作ってくれたものです。これからも皆さんと一緒に作り上げていきたいと思います
と、自分だけの力ではない事を繰り返し伝えていました。

「ボクシングでは常に恐怖と戦っています」と戦うことへの不安を隠さずに語る村田選手。
彼はこの不安感とどのように向き合いながらここまで強くなり勝ち上がってきたのでしょうか?そこには大切な人達の存在があるようです。

◆恩師の武元先生

村田選手が中3の時、彼のボクシングを見てその才能に目を留め声をかけてくれたのが南京都高校ボクシング部の武元先生です。
まだやんちゃで仲間を守るために下級生を殴るなどムダに力を発揮していた村田選手に
「お前の拳はそういうことに使うのではなく、自分の可能性にチャレンジすることに使いなさい」
「お前はそういう力を秘めているんだよ」
「試合に勝っても相手選手を思いやりなさい」
など、技術面だけでなく精神面でも多くの指導を続けた武元先生。恩師の元で村田選手は徐々に頭角を現し、高校2年で選抜・総体・国体の3冠を達成、高校3年時は選抜と総体を制して5冠を達成しました。
その後東洋大学に進みボクシングを続けるも、北京五輪代表をかけた世界選手権では惨敗。世界の壁を感じて一度は現役引退し、大学職員として東洋大学ボクシング部の指導にあたっていましたが、ボクシング部で不祥事が起こった際「大学の汚名を晴らすには、人に頼らず自分の力でやろう」と現役復帰を果たしています。
そんな折、恩師武元先生が50歳という若さで急逝されます。そして先生が『オリンピック選手を育てたい』という夢を持っていた事を亡くなられた後に知るのです。さらに先生が亡くなる1年前に撮影されたビデオレターには
「夢は見るのではなく実現するもの。実現してください」
という最期のメッセージが残されていました。村田選手はこの心揺さぶる言葉を涙しながら聞き、その後一心不乱にボクシングに打ち込み、ロンドン五輪出場権を獲得したのです。

◆彼を信じて支えた妻

東洋大学の職員時代に知り合い結婚された奥様。彼女はロンドン五輪に行く前から
「オリンピックで金メダルをとりました。ありがとうございます」
と書いた紙を冷蔵庫に貼っていたというエピソードで有名です。

脳科学の世界では、未来に起こる事でも「○○できました!」と既に叶った文章で書き出したり、更に「ありがとうございました」とその結果に対する感謝まで書き出すと、「この人はこれができるのだ」と脳が認識し、自然と現実になる方向に動いてくれると言われています。こんなサポートをしてくれる奥様にも支えられ、金メダルを獲ったイメージをリアルに描きながらロンドン五輪に臨んだのでしょう。そして本当に金メダルを獲得してしまったのですから凄いものです。
そして今回の世界ミドル級王座決定戦前にも、もちろん下記のメモを冷蔵庫に貼っていたそうです。

◆父親の言葉

また、彼の父も節目節目で彼を支えてくれています。精神的に不安になりやすい彼にニーチェの哲学書を渡したのも彼の父です。
プロデビュー戦が間近になったある日、ふいに恐怖感に襲われた彼は、父親に電話をかけ素直な気持ちを伝えました。すると父は
「おまえの息子は今イスの上からジャンプできるようになって何度もやってみせている。できるようになった喜びを皆に見せているんだ」
「お前もそれでいいじゃないか。ボクシングができる喜びを感じて、これができるんだあれができるんだと、皆に見せればいいんだよ」
と。こうして彼はプロデビュー戦時に笑顔でリングに上がり、圧倒的強さで勝利を収めたのです。

◆愛すべき子ども達の存在

記者たちに自ら子どもの写真を見せる村田選手。
「運動会で子どもが2人とも1等賞だったんです。息子が「走っている時、心臓がとび出そうだった」と言っていたので、僕も息子に負けないように心臓が飛び出るくらい試合で頑張ります!」
と嬉しそうに話していました。


「子どもの顔を見ながら一緒に寝た日は翌日元気になっているんです」という村田選手。

i-color(統計分析)で見てみると、彼は予想通り【共感タイプ】のi-colorオリーブでした。周りの仲間の気持ちに応えようという思いがモチベーションになり、いばらのような厳しい道にも立ち向かって行ける志向タイプです。
また共感タイプは、自分の家族を持つ事で守るべき大切なものができて更に強くなっていく傾向もあります。今日のチャンピオンベルトを見て喜ぶ家族の笑顔が、彼を更に強くしてくれるのでしょう。

◆まとめ

村田選手は大好きなボクシングを続けながらも、常に大きな不安感や恐怖感に襲われています。そして、メンタルが行動にブレーキをかけることを誰よりも自覚している彼は、心理学や哲学の本を読むなどして、心を強く保つために自分なりの努力も続けています。しかし、一番の心の支えは彼の気持ちを理解し、何があっても裏切らずにサポートしてくれる仲間の存在だったようです。

「僕がボクシングで見せられるのは、恐怖と戦い乗り越えていく勇気ある姿です」
その言葉通り、今日の試合での村田選手は、常に勇気を持って攻め続け相手選手の戦意を喪失させる程の気持ちの強さが全面に出た素晴らしい姿でした。
スポーツにおいて気持ちを強く持つ事の大切さを改めて感じさせてくれた今日の試合。本番で緊張しやすい子ども達もこの試合を見て、諦めずに恐怖と戦い乗り越える勇気を持ってくれる事を願っています!

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