脳神経科学から子ども達の教育を考える

昨日は貴重な研修会に参加させていただき、脳神経科学を様々な分野に活用されているDAncing Einstein(ダンシング アインシュタイン)CEO 青砥瑞人さんの講演を拝聴する機会をいただきました。

日本の高校を中退後、UCLA大学留学を決意し脳神経科学を学ぶ道を選んだ青砥さん。脳神経科学を日本の教育分野に活用したいという強い想いを持ってから、関係者に多数提案メールを送るもわずかな返信しかなかったとのこと。そんな中、公立中学で『子ども達の自律』を主軸に学校改革を進められいる麹町中学校の工藤勇一校長とご縁が繋がり、今年度麹町中学校にて定期的に研修会や生徒達への学内講座を開催されているそうです。

今回は、私の普段の活動内容が脳神経科学の面から見るとどうなのか検証してみたいと思い講演を聴かせていただきました。講演内で特に心に残ったポイントをピックアップしてまとめてみます。

◆自分のことは自分が一番理解しにくいもの

ソクラテスは「汝 自身を知れ!」「無知の知より始めよ」と言う言葉を残しています。また、元聖路加国際病院理事長で昨年108歳の人生を全うされた日野原重明先生でも著書の中で

「105歳になっても尚、僕にはまだ自分でも知らない未知の自分がたくさんあると感じている」

と話されています。その位、人は自分自身を理解できていないものなのです。

◆自分を客観的に観察するクセをつける

そして、人は自分自身を理解するために「他者からのベクトル」を重要視しがちです。確かに、普段接する子ども達を見ていると、親や先生から「あなたって〇〇な子ね」と言われると、その言葉を素直に刷り込んで認識しているように感じます。

私は子育てセミナーで常に「親御さんはマイナスな発言を極力控え、子どもの良い点を探し出して本人に伝えるように」と話していますが、これは「他者からのベクトル」を重要視しがちな私達には必要なアドバイスだったようです。
しかし「他者ベクトル」だけで自分を理解するのは脳科学的にオススメできないそうです。「自己ベクトルで視る」、それも1人で内省する主観的な見方より「自分を上から俯瞰するように客観視すること」が重要だといいます。

その方法の1つは「自分を「〇〇さん」と呼び、「〇〇さんはこう感じていた、考えていた」と自分に言ってみること。青砥さんは講演中も、講演している自分を外から客観視して「話し方が速くなっているよ」「目線が右の人達の方ばかりになっているよ」と自分に話しかけているそうです。この感覚は意識しないと作動しにくいため、普段から意識するクセをつけると良いとのこと。

また、自分の映像を視ることも効果的なようです。この説明を聞いた時、ふと以前聞いた小学生の変化の話を思い出しました。なかなか教室で席に座っていられず動き回ってしまう子どもに、その様子をビデオに録画して見せたところ、自分でもその映像(自身の行動)に驚きつつも、その行動が他人に迷惑をかけている事に気づけて歩き回る行動が減った、という事例です。
感情的になりやすい子や、激しい行動に出てしまう子も、落ち着いている時に映像で自分を客観視させ、「本当は自分はこう行動したい」というゴール(目的)と現実の違いを自分自身で理解して制御できると、脳内の土台となる「メタ認知能力」が高められるそうなのです。

◆i-color(統計心理分析)を使って客観視するクセをつける

私がいつも活用しているi-color(統計心理分析)は、個々人の志向傾向や価値観タイプを分類して理解するツールのひとつです。我が家では娘との会話の中で

「私ってこういう思考タイプだから、ついこういう行動に出ちゃうのよね」

と自身の言動について分析しながら反省したり振り返ることが日々あります。青砥さんの講演によれば、これもメタ認知能力を高める事に繋がっていたようです。
また、i-colorを活用すると、個々人の違いを客観的に捉えて受け入れられるようになっていきますが、これは脳の認知的柔軟性を高める行動だと言います。脳にもよい影響を与えていることが改めてわかるとひじょうに嬉しくなりました♪

◆出来事に対する感情を冷静に振り返る

また、人は脳内で様々な出来事を出来事として記憶するだけでなく、その出来事に対してどんな感情を持ったかも記憶しています。この感情が大きく動いた方が、脳内でも大きな意味付けをして強く記憶されるのです。この時に、冷静に振り返るのが大切だと言います。普段から感情が動いた時にメモに残し、後で冷静に振り返って人に話したりブログにまとめたりするのも良さそうです。

青砥さんの講演の前に映画「みんなの学校」を鑑賞したのですが、映画の舞台である大空小学校では、何かアクシデントが起きた時には必ずその生徒に「なぜその行動を取ったのか、その時どんな気持ちだったのか、今相手にどうしたいのか」を全て自分で発言させていました。自分で言葉にして発すると、自分の中でも感情を再認識して理解が深まるようです。子ども達は徐々に激しい行動が減ってクラスメイトに溶け込んでいっていました。
子どもの頃から、自分の思いを自分の言葉で相手にわかるように発言できる力をつけるのが、教育で最も重要視されるべき事のひとつだと改めて痛感しました。

◆気持ちよさを味わう大切さ

新たな挑戦をしていけば、うまく出来なかったり達成できない事も当然発生し、イライラやモヤモヤした感情が起こるものです。しかし、この感覚をも「気づけてラッキー!」とポジティブに受けとめて諦めずに変化させていくことが重要だと言います。

また、気持ち良い感覚を意識的に味わうと、感情記憶に定着しやすいそうなのです。こうして物事を前向きに捉えられるようになると、脳内も活性化して成功率も上がり、その成功体験が自信に繋がっていくのです。

子どもに接する時は、わずかなことでも良いポイントをみつけて伝え、子ども達に「気持ち良さ」を繰り返し感じさせるのが私達大人の大切な役割なのでしょう。

◆子どもとのコミュニケーションの見直し

子ども達が、ネガティブ感情記憶を脳内に多数記憶し、壁にぶつかった時にすぐに諦める人間にならないためにも、大人は子どもと接する際の言葉選びの工夫や、子ども達が自分の気持ちを1人で抱え込まず、自分を冷静に客観視して自分の言葉で話せるような力を育ませることが必須だと強く感じました。
これは、スポーツ選手と指導者の関係性にもまさに活かしていきたいところです。

青砥さん、貴重なお話をありがとうございました!

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