孤高の力士 稀勢の里は生粋の独立タイプ

唯一の日本人横綱だった稀勢の里関が引退を発表しました。そして引退会見で隠すことなく流し続けた涙。その涙の理由も含めて、稀勢の里関のメンタルタイプについてまとめました。

◆力士に多い独立タイプ

以前のブログ(最下段URL参照)でも取り上げましたが、横綱まで上り詰めた関取のメンタルタイプを調べてみると、大半が『独立タイプ』でした。その理由は、相撲が独立タイプのモチベーション特性にピッタリはまっているからでしょう。その特性とは

・何事にも勝たないと気が済まない負けん気の強さ

・1対1で戦い、自分の実力に対する評価が明確な競技が好き

・自分が出した結果への対価が次のモチベーションに繋がる(→相撲では懸賞金)

・自分の評価が明確に可視化される事を好む(→相撲では番付表の名前の大きさ)

などなど。これだけモチベーションが上がる条件が揃っているのですから、独立タイプの力士の多くが相撲界で成功し昇進している事実も頷けます。
そして、稀勢の里関は、どんな角度から調べても独立タイプの面しか出てこない、生粋の独立タイプ。過去の関取では、横綱として大記録を樹立した北の湖関に近しいメンタルタイプです。稀勢の里関の信念は『絶対に逃げないこと』。まさに独立タイプらしい志と言えるでしょう。

 

◆独立タイプの涙は『勝負に関わる涙』

涙の理由はメンタルタイプによっても大きく違います。
心優しい共感タイプは、最も涙腺が緩く感情が大きく動くと泣いてしまう事が多いため、涙の理由も、喜びの涙・感動の涙・悲しみの涙・自信喪失の涙・もらい涙など様々です。アスリートではサッカーの長友佑都選手が共感タイプ。2014年W杯で大敗した直後のインタビューでコメントできないほど泣き崩れていたシーンは印象深いでしょう。泣いた後のコメントは「応援してくれた人やお世話になった人に笑顔を届けられず、恩返しもできず申し訳ない」という謝罪の言葉でした。自分の気持ち以上に、大切な相手の気持ちを考えて涙してしまうのが共感タイプらしいところです。

いつもクールに決めていたい直感タイプは、人前で涙を流すことを極力嫌います。そのため「どんな時に泣くか?」と質問すると「大人になってからはほぼ泣いていない」と返答する人が多いのがこのタイプ。そして、どうにも抑え切れず涙が出てしまった時は、即座に誰もいない場所に移動してその姿を隠す傾向があります。

そして、稀勢の里関を含む独立タイプが泣く理由の大半は悔しさから来るものでしょう。独立タイプのアスリートが勝負に負けた後、悔しさが抑え切れず人目を憚らずに泣いているシーンは頻繁に見受けられます。ただしその涙の理由は、負けて悲しいのではなく、自分の力で勝てなかったことに対する自分の不甲斐なさに腹が立って出る悔し涙なのです。そして、もうひとつの涙は、自分なりに掲げた目標や夢を達成できた時に出る『達成感から来る嬉し涙』です。稀勢の里がケガを押して出場し優勝した直後に流した涙はこれでしょう。独立タイプの涙は、どちらにしても勝負に対する思いが強く関わっているのです。
そして今回の引退会見で稀勢の里関は
「土俵人生において一片の悔いもございません」
と、大好きなラオウ(北斗の拳の登場人物)のセリフを引用したかのような潔い言葉を選びました。しかし、あの言葉は本音ではなく、横綱という立場を考えた上での言葉だったように聞こえました。独立タイプの横綱が、ケガによりその後実力を発揮し切れず、結果も残し切れずに引退という決断に至ったのですから、悔いが残っていない訳がありません。言葉にせずとも、あの止めることの出来ない大粒の涙が、彼の悔しさ・無念さをこの上なく表現していたように感じます。

 

◆努力でジリジリ上り詰める雑草強さ

稀勢の里関は、中学生の時にこんな言葉を残しています。


中学生にして自己分析し切っているかのような言葉が独立タイプらしいと感じました。統計心理分析で見ると、天才肌でスター性を持ったアスリートは直感タイプにひじょうに多く存在しています。それに対し、独立タイプの有名アスリートによく付けられるのは努力の天才という呼び名です。独立タイプから見ると「どうして自分より努力していないのに、あんなに凄い結果を残せるのだろう?」と感じるのが直感タイプ。そして、羨ましさ半分悔しさ半分で相手を観察する中で「自分はあの選手とは根本的に違う。だからあいつに勝つには何倍も努力するしかないんだ!」と理解して努力するのが独立タイプなのです。イメージ的には、童話「ウサギとカメ」のウサギが直感タイプ、カメが独立タイプを象徴しています。
特に稀勢の里関は独立タイプの中でも、物事を長期的目線で捉えて一途に黙々と努力を続けられるタイプ(i-colorオレンジです。途中で抜かされようが「最後に勝てばいい」と考えるカメタイプなのです。人一倍年数はかかったものの、黙々と努力を重ねて横綱というゴールにたどり着いた稀勢の里関は、独立タイプの粘り強さを体現してくれたアスリートの一人と言えるのです。

 

◆ただでは起き上がらないのが独立タイプ

そして、自分のミスを決して無駄にせず、違う形で糧にして結果に繋げるのも、独立タイプの特徴のひとつです。
「一生懸命相撲をとる力士、そしてケガに強い力士を育てていきたい」
とコメントした稀勢の里関。まさに自分の相撲人生で実践したこと、経験したこと全てを次の世代に引き継いで活かしていこうと考えているのでしょう。稀勢の里関のような雑草魂を持った力士が大きく育ち、親方が成し得なかった横綱での好成績を残してくれることを心より願ってなりません。
そして、記録で見ると横綱での勝ち数は最少でも、稀勢の里関は多くの人達の記憶に残る、久々に登場した日本人らしい大横綱であったことは間違いないのです。稀勢の里関、本当にお疲れ様でした。そして、親方としてのご活躍を心から期待しています!!

(最後に、稀勢の里関のように力士生命を短くする程の大ケガを負う力士が二度と出ないように、土俵下をマット素材で囲う等の改善策を一日も早く取ってほしいと強く願います)

<関連ブログ> 稀勢の里はあの名横綱と同じ志向タイプでした
http://makokouno.main.jp/wp/1865/

『チームワークの向上』『本番に強い選手育成』にご興味のある方へ

指導者や親御さんに向けて
★子どもの根本的な志向タイプについて
★子どもの特性を伸ばす関わり方
★モチベーション・自己肯定感の上げ方をテーマにしたセミナー

スポーツチームの「チームアドバイザー」として
★個々の選手に適したアプローチ法の具体的アドバイス
★選手向け研修の企画・実施
等を行っています。

ご興味のある方は、下記よりお気軽にご相談くださいませ。

ご質問・お問い合わせ